韓国で空前のブームを巻き起こし、今や全世代に愛される音楽ジャンルとなった「トロット(韓国の演歌・歌謡曲)」。その火付け役であり、数々のスターを輩出してきた伝説のオーディション番組『Miss Trot(ミストロット)』シリーズの最新作、『Miss Trot 4(ミストロット4)』がついに幕を閉じました。
最終回の視聴率は驚異の18.4%を記録。この数字からも、韓国国内での注目度の高さが伺えます。激戦を勝ち抜き、新たなスターの座を掴んだTOP5のメンバーたちが、3月13日に開催された記者懇談会で、約4ヶ月間にわたる過酷な挑戦の裏側と、これからの活動への意気込みを語りました。
伝統芸能の継承者から、アイドル出身の苦労人、そして現役看護学生まで。ドラマチックな背景を持つ5人の「トロットの女王」たちの素顔に迫ります。
■ 国楽の神童からトロットの頂点へ!優勝者イ・ソナが掴んだ栄光
今回の『Miss Trot 4』で見事「真(ジン/眞)」の座に輝いたのは、イ・ソナ(이소나)(이소나)さんです。
豆知識:韓国のランキング呼称「真・善・美」
韓国のミス・コンテストやオーディションでは、1位を「真(ジン/眞)」、2位を「善(ソン/善)」、3位を「美(ミ/美)」と呼びます。これは韓国で古くから使われている美の基準を示すランク付けで、単なる順位以上の名誉ある称号とされています。
イ・ソナさんは、国家無形遺産第57号「京畿民謡(キョンギミニョ/ソウル近郊の伝統歌唱)」の伝承者として、20年以上も国楽(クガク/韓国の伝統音楽)一筋に歩んできた実力派。彼女が奏でる突き抜けるような高音と安定した歌唱力は、予選の段階から審査員(マスター)たちを唸らせてきました。
「この番組のおかげで人生が変わったと言っても過言ではありません。舞台が減っていく中で、切実な思いで挑戦しましたが、最後に1位になれて本当に嬉しいです」と語る彼女。実は、夫で俳優のカン・サンジュン(강상준)さんの存在も大きな支えだったそうです。
「夫はミュージカルから映像の世界へ転向した俳優なので、歌の表現力についてたくさんのアドバイスをくれました。決勝曲で歌詞に感情を込める際、彼の言葉が本当に大きな力になりました」と、夫婦の絆を明かしました。国楽というルーツを守りつつ、トロットという新しい舞台で花開いた彼女の歌声は、今の韓国で最も求められている「癒やし」そのものと言えるでしょう。
■ アイドルからの再出発、ホ・チャンミが証明した「4度目の正直」
2位(善)に選ばれたホ・チャンミ(허찬미)さんの名前を見て、ピンときたK-POPファンも多いのではないでしょうか。彼女はかつて男女混合グループ「男女共学(ナムニョゴンハク)」や「F-ve Dolls(ファイブドールズ)」として活動し、あの有名サバイバル番組『Produce 101』にも出演していた、いわば「オーディションのベテラン」です。
「13歳の頃から練習生を始め、これまで何度もオーディションに挑戦し、脱落を経験してきました。自分自身に懐疑的になったこともありましたが、今回が本当に最後だという覚悟で挑みました」
彼女が今回、何よりもこだわったのは「アイドル出身」という肩書きを脱ぎ捨て、一人の歌手として認められることでした。パフォーマンス力だけでなく歌唱力を磨くため、優勝者のイ・ソナさんと同じ「京畿民謡」を学び、正統派トロットの研究に没頭したと言います。
韓国では近年、アイドルを目指していた若者がトロットに転向するケースが増えています。K-POPの厳しい競争社会を生き抜いてきた彼女たちが、トロット特有の「クッキ(声をひっくり返すような技法)」をマスターしたとき、それは新しい世代のトロットとして爆発的な人気を生むのです。ホ・チャンミさんの準優勝は、あきらめない心が起こした奇跡として多くのファンに感動を与えました。
■ MZ世代の看護学生からベテラン歌手まで、多彩なTOP5の面々
3位(美)のホン・ソンユン(홍성윤)さんも、国楽出身の若き才能です。彼女は「国楽もトロットも、どちらも人々の生活に密着した歌詞。感情を表現する上で、国楽の経験が大きな助けになりました」と語り、伝統と現代を繋ぐ架け橋としての覚悟を見せました。
4位のキル・リョウォン(길려원)さんは、現役の看護学生(MZ世代)という異色の経歴。予選当初は「すぐに脱落すると思っていた」という彼女ですが、その独特の「クッキ(節回し)」の技術から「クッキの女神」と呼ばれるまでになりました。体調を崩し声が出ないという絶体絶命のピンチを乗り越えて掴んだ4位は、彼女の未来を大きく広げることでしょう。
そして5位のユン・テファ(윤태화)さんは、活動18年目の現役歌手。ベテランでありながら、新人に混じって競い合うというプライドを捨てた挑戦が、視聴者の胸を打ちました。「歌こそが私の人生」という歌詞の楽曲を選び、18年の重みを歌に乗せた彼女の姿は、多くの大人世代の共感を呼びました。
■ 「K-トロット」は世界へ。彼女たちが描くこれからの物語
今回のTOP5が口を揃えて語ったのは、「K-トロット」の海外展開への期待です。
「トロットには、聴く人を慰める力がある音楽が多い。世界中の人々とも共感し合えるはずです(ユン・テファ(윤태화))」
「正統派のルーツは守りながらも、多様な試みを通じて、全世代が楽しめる音楽にしていきたい(ホ・チャンミ(허찬미))」
韓国では今、トロットをただの「昔の歌」ではなく、若者も楽しむ「ヒップな音楽」として再定義しようとする動き





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