K-POPからKが消える?NiziUからKATSEYEまで世界を呑み込む韓国式育成システムの光と影

日本の音楽シーンを席巻したニジュー(NiziU)の登場から数年。今、K-POP界では「K(韓国)」という枠組みを超えた、かつてない大変化が起きています。韓国の芸能事務所が培ってきた独自の育成システムを海外に輸出し、現地のメンバーだけで構成されたグループをデビューさせる「K-POPの現地化」戦略。その最前線では今、何が起きているのでしょうか。

■ 「韓国人がいないK-POPグループ」が世界を席巻する理由

かつてのK-POPといえば、「韓国人メンバーを中心に、数人の外国籍メンバーが加わる」という形が一般的でした。しかし、今のトレンドは「メンバー全員が日本人」や「アメリカを拠点とする多国籍グループ」です。

その先駆けとなったのが、JYPエンターテインメント(パク・ジニョン(박진영)氏が設立した大手事務所)が生んだニジュー(NiziU)です。彼女たちは韓国式の厳しい練習生システムを経て日本でデビューし、瞬く間に国民的グループとなりました。この成功を機に、HYBE(ハイブ/BTS(방탄소년단)らが所属する業界最大手)やSMエンターテインメントといった大手事務所もこぞって「システムそのものの輸出」に乗り出したのです。

例えば、HYBEがアメリカのゲフィン・レコードと組んで結成したキャッツアイ(KATSEYE)は、その象徴的な存在です。彼女たちは第68回グラミー賞(アメリカで最も権威のある音楽賞)の「最優秀新人賞(Best New Artist)」候補として名前が挙がるほどの注目を集めています。メンバーの国籍はバラバラですが、彼女たちが受けてきた教育は紛れもなく「K-POP式」。歌、ダンス、ビジュアル、そしてファンとのコミュニケーション能力まで徹底的に叩き込まれるこのシステムは、今や一つの「ブランド」として世界に認められています。

■ 爆発的な経済効果と「K-POPの定義」を巡る議論

なぜ韓国の事務所は、これほどまでに海外拠点のグループ作りに心血を注ぐのでしょうか。その理由は、驚異的な数字に表れています。

2025年の予測データによると、HYBEの連結売上高は2兆6,499億ウォン(約2,900億円)に達すると見られています。その驚くべき点は、営業利益の約7割が海外からもたらされているということ。もはやK-POPは韓国国内の市場だけでは語れない、巨大なグローバル・ビジネスへと進化したのです。

これに伴い、HYBEのサントス・ブラボス(SANTOS BRAVOS/中南米拠点グループ)や、JYPのガールセット(GIRLSET/アメリカ拠点グループ)など、世界各地で「韓国発のシステム」によるニューフェイスが次々と誕生しています。

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。「韓国人メンバーがおらず、韓国語で歌わないグループをK-POPと呼べるのか?」という点です。

韓国の音楽業界では、K-POPを「韓国人が歌う音楽」ではなく「韓国のシステム(練習生制度やプロデュース手法)で生み出されたジャンル」と定義し直す動きが加速しています。厳しい練習生時代(事務所が宿舎やレッスン費をすべて負担し、デビューを約束されないまま数年を過ごす韓国特有の育成期間)を経て、一糸乱れぬダンスを披露する……そのスタイルこそがK-POPの本質であるという考え方です。

■ 華やかな成功の裏に潜む「影」とこれからの課題

もちろん、すべてが順風満帆というわけではありません。この「現地化戦略」には課題も指摘されています。

最大の懸念は、爆発的な話題性はあっても、それを「持続的なファン活動(ファンダム)」に繋げられるかどうかです。韓国で活動する従来のグループは、音楽番組への出演やサイン会などを通じてファンと密な関係を築きます。しかし、海外拠点のグループの場合、現地の音楽市場の特性や文化の違いにより、韓国と同じような熱狂を維持するのが難しいケースもあります。

また、既存のK-POPファンの中には「韓国の文化や言語が含まれていてこそのK-POPだ」と考える根強い層もいます。あまりに現地に馴染みすぎると、従来のK-POPが持っていた「異国情緒」や「特別感」が薄れてしまうというジレンマも抱えているのです。

それでも、SMエンターテインメントのウェイブイ(WayV/中国拠点グループ)やエヌシーティー・ウィッシュ(NCT WISH/日本拠点グループ)のように、地域に根ざしながらも「K-POPブランド」のクオリティを維持し、成功を収める例は増え続けています。

K-POPは今、「韓国の音楽」から「世界の音楽システム」へと脱皮しようとしています。私たちファンにと

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