「一瞬、本物のジェニかと思った……」
今、韓国のSNSやオンラインコミュニティがある一本の動画を巡って騒然となっています。画面に映るのは、一人の男性。しかし、その顔が瞬きをする間に、世界的な人気を誇るガールズグループ、ブラックピンク(BLACKPINK)のジェニ(제니)へと変貌を遂げます。さらに驚くべきことに、その顔は次々と別のスターたちに入れ替わっていくのです。
今回は、K-POPファンなら見過ごせない、韓国で社会問題化しつつある最新の「AIフェイススワップ」技術と、その裏に潜む危うい現状についてお伝えします。
■ 驚異の再現度?男性の顔が瞬時に人気アイドルへ変わる衝撃映像
話題となっているのは、SNSを中心に急速に拡散されているAI合成動画です。動画内では、ベースとなっている男性の顔の上に、ジェニをはじめ、同じブラックピンクのロゼ(로제)やジス(지수)、アイヴ(IVE、圧倒的なビジュアルで知られる6人組)のチャン・ウォニョン(장원영)、イッチ(ITZY、パワフルなダンスが魅力の5人組)のユナ(유나)、アイリット(ILLIT、サバイバル番組から誕生した5人組)のモカ(모카)、そしてストレイキッズ(Stray Kids、セルフプロデュース力が高いボーイズグループ)のヒョンジン(현진)など、名だたるトップスターたちの顔が次々と合成されています。
単に写真を貼り付けたような不自然なものではありません。男性が笑えばAIのジェニも笑い、顔をしかめればAIのチャン・ウォニョンも同じように表情を歪めます。顔の向きや照明の当たり方まで極めて自然に反映されており、予備知識がなければ「本人が撮影した動画」と見間違えてしまうほどのクオリティです。
この動画を制作・投稿したのは「UBC AI MAN」と名乗る開発者で、自身の技術を宣伝するために、すでに30本以上の合成動画を公開しています。中にはエンハイプン(ENHYPEN、多国籍メンバーで構成されるボーイズグループ)のソンフン(성훈)を合成した動画が220万回、モカの動画が211万回再生を超えるなど、その拡散力は凄まじいものがあります。
■ 「従来のディープフェイクとは別物」進化しすぎたAI技術の影
韓国のネットユーザーたちが最も衝撃を受けているのは、その「技術の進化」です。これまでの「ディープフェイク(AIを用いた人物画像合成技術)」は、どこか表情が硬かったり、輪郭に違和感があったりすることが一般的でした。
しかし、今回の動画で披露された技術は、微細な表情の変化や照明の加減までリアルタイムで補正しているように見えます。開発者は「もうすぐアプリをリリースする」と告知しており、誰でも手軽にこのレベルの合成ができるようになる未来がすぐそこまで来ていることを示唆しています。
ここで韓国ならではの文化的背景を補足すると、韓国は世界でも有数の「超ネット社会」であり、アイドルの肖像権やパブリシティ権(有名人の名前や顔が持つ経済的価値を保護する権利)に対して非常に敏感な国民性を持っています。特に、過去には「n番部屋事件」などのデジタル性犯罪が大きな社会問題となった経緯もあり、女性アイドルの顔を悪用した合成コンテンツに対しては、日本以上に厳しい視線が注がれています。
実際、オンラインコミュニティでは「技術はすごいけど、悪用されるのが目に見えている」「私たちの推し(お気に入りのメンバー)が犯罪に巻き込まれたらどうするんだ」といった、怒りと不安が入り混じったコメントが殺到しています。
■ 法整備が追いつかない現状…推しを守るために私たちができること
専門家もこの現状に警鐘を鳴らしています。パブリックAI研究センターのキム・ミョンジュ(김명주)センター長は、現在の法律の限界を指摘します。
「韓国では主に肖像権侵害として扱われますが、アメリカなどで一般的な『パブリシティ権』という概念での保護も議論されています。最近のAI基本法では、AI生成物であることを表示する義務を課そうとしていますが、これは主に開発者向け。一般ユーザーが悪意を持ってその表示を消して利用した場合、現行法で直接処罰するのは難しい側面があるのです」
つまり、技術の進化があまりにも早すぎて、守るべき法律が追いついていない「無法地帯」が生まれつつあるのです。すでに海外の掲示板などでは、「彼女の顔を合成してアダルト動画を作れるか」「リアルタイムで顔を変えるツールを共有してほしい」といった、背筋が凍るようなやり取りも散見されます。
K-POPという文化が世界中で愛されている今、こうした問題は韓国国内だけの話ではありません。日本のファンにとっても、自分の「推し」が知らないところで勝手に動画を作られ、それが本物のように扱われるリスクは等しく存在します。
技術の進歩は本来、エンターテインメントをより豊かにするものであるはずです。しかし、それが誰かの尊厳を傷つけたり、犯罪に加担したりするものであってはなりません。精巧すぎる「偽物の笑顔」を無邪気に楽しむのではなく、その裏にあるリスクを理解し、公式のコンテンツを正しく応援する姿勢が、今こそ私たちファンに求められているのかもしれません。
あなたの推しの顔が、もし悪意のある合成に使われていたら……と思うと、本当に恐ろしいですよね。皆さんは、こうしたAI技術の進化とアイドルの権利についてどう感じますか?ぜひ皆さんの率直な思いをコメントで聞かせてください。
出典:https://www.hankyung.com/article/2026030512667
コメント