2026年1月、中国で1日平均470本のAIショートドラマが公開されました。制作費約6万円、わずか2日で完成し5億回再生を記録する作品も登場。ツール覇権を握る中国に対し、韓国が抱える制作環境の課題を解説します。
■ 1日470本の新作が誕生する「AIショートドラマ」の衝撃
2026年、エンターテインメントの風景は劇的な変化を迎えています。スマートフォンをスクロールすれば必ず目に飛び込んでくる、1〜2分程度の短い映像「ショートドラマ」。どん底から這い上がる復讐劇や、財閥家の隠し子による逆転劇など、息つく暇もないスピード感で展開されるこれらのコンテンツは、今やその多くがAIによって作られています。
未来技術文化研究院の院長であるハ・ミンフェ(하민회)氏が寄稿した内容によると、2026年1月時点で中国のプラットフォームからは1日平均470本ものAIショートドラマが新たにリリースされました。2月基準で流通している作品数は、すでに12万7800本に達しています。驚くべきはその制作工程です。俳優、カメラ、大がかりな撮影セットはもはや必要ありません。脚本を入力するだけで、AIが映像、音楽、編集のすべてを処理します。ある制作会社は、戦争シーンを含むショートドラマをAIコンピューティング費用のみ(約60万ウォン/約6万円)で、わずか2日間で完成させ、5億回という驚異的な再生回数を記録したと明かしています。
■ グローバルAI映像生成市場で覇権を握る中国勢
これまでAI映像生成の分野で世界を驚かせてきたのは、アメリカのOpenAIが提供する『Sora(ソラ)』でした。しかし、著作権訴訟のリスクや膨大なコスト負担により、2026年3月にサービスを終了。その空白を埋める形でトップに躍り出たのが、中国のKuaishou(快手)が開発した『Kling(クリン)』です。
独立評価機関である「Artificial Analysis」のスコアによると、最新の『Kling 3.0』は、Googleの『Veo 3.1』やアメリカのRunway社が展開する『Gen-4.5』を抑え、グローバル指標で1位にランクインしています。現在、世界のAI映像生成ツールの使用量の50%以上を、Kling、Hailuo、Wan、Seedanceといった中国企業が占めているのが現状です。これは技術の覇権が、私たちが得意とするエンターテインメント領域においても塗り替えられつつあることを意味しています。
■ 「コンテンツ強国」韓国に足りないのは独自の制作ツール
韓国は『イカゲーム』がNetflixで歴史を塗り替え、K-POPがビルボードを席巻し、ウェブトゥーン(韓国発のデジタルコミック)が世界中の原作IP(知的財産)として消費される「コンテンツ強国」です。しかし、そのコンテンツを作るための「道具」に目を向けると、状況は楽観できません。
現在、韓国の現場で使われている映像編集ソフトはアメリカのAdobe、AI映像生成はアメリカのRunwayや中国のKling、音楽生成はアメリカのSunoといったように、すべてが外国産です。グローバルなAI映像生成ランキングに名を連ねる韓国企業は、現時点では存在しません。世界が認めるコンテンツを作りながらも、その製造手段を他国に依存しているという構造的な問題を抱えています。
中国はこの流れと対照的な動きを見せてきました。コンテンツとツールを同時に作り上げ、エンターテインメントをAIツールの実験場として活用したのです。1日470本も生み出されるAIショートドラマが、そのままAIのトレーニングデータとなり、数億人のユーザーからのフィードバックがツールの性能をさらに高めるという循環を作り出しました。韓国コンテンツがその「主権」を守り続けるためには、優れた作品作りだけでなく、独自のAI制作ツールの確保が急務となっています。
📚 Buzzちゃんの豆知識
■ ショートドラマ(Short-form Drama)
1話あたり1〜2分程度で構成される、縦型視聴を前提としたドラマ形式です。2020年代半ばから急成長し、移動中などの隙間時間に消費できる手軽さが受けています。従来のドラマに比べて「刺激的な展開」と「速いテンポ」が特徴で、制作費が抑えられることからAI技術との相性が非常に良いとされています。
■ IP(Intellectual Property)
知的財産権のこと。ドラマの世界では、ウェブトゥーンや小説などの「原作」を指すことが多いです。韓国はウェブトゥーンをベースにしたドラマ制作が非常に盛んで、一つの優れたIPをドラマ、映画、ゲーム、ミュージカルなど多方面に展開する「OSMU(One Source Multi Use)」戦略を国を挙げて推進しています。
私は『財閥家の末息子』のような重厚な物語が好きなので、AIが作るお手軽な復讐劇ばかりになると少し寂しい気もします。でも、たった6万円で大迫力の映像が作れるなら、新しい表現も増えそうですよね。皆さんは、AIが完璧に作ったドラマを観てみたいですか?それとも、やっぱり俳優さんの生の演技が一番だと思いますか?
コメント